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[2006/10/09] 田中君を探して〜パパとぼくの冒険〜第5章11 

パパは、その場で話が終わるのを待っていた。
しかし、ときおり咳が出るので、その女性は、それが気になるのかパパを見ながら
話をしていた。
ようやく話が終わり、パパは近づいた。しかし、女性は気の毒そうに言った。
「マネージャーが聞いてくれたのだけど、誰も、そういう子供を預かっていないら
しいの」
パパは、黙っていた。
「でも、ここにいれば、まだ安心よ。街に出れば、危険だけど」とつけくわえた。
「それはないと思いますが。それじゃ、もう一度探してきます」
「何かあれば、わたしに連絡が来るようになっていますから」
パパは、礼を言い、また大勢の人が行きかうほうへもどった。
人の流れに向って、ぶつかりそうになりながら進んだ。
そして、ぼくぐらいの子供の顔を、じろじろ見ながら歩くので、不審がられたよう
だ。
そのあと、バスが発着する場所も探した。そこにも、ぼくはいなかった。
ターミナルにいれば、まだ安心よという、リオツールの女性が言ったことが気にな
り、ひょっとして、ぼくがターミナルを出ていないか心配になったが、
それは、ありえないことだと考えなおし、もう一度リオツールにもどった。
さきほどの女性が、すぐにパパに気がついて、にこっと笑ったので、見つかったと
思い、急いで、そっちへ行った。
「見つかりましたか?」
「いや」
「まだ連絡がないのよ」と、気の毒そうに言った。
そして、「バスに乗ってしまったということはありませんか?」と聞いてきた。
「それはないと思います。まだチケットを買っていなかったから」
「リオツールは、8時になったら閉まるので、観光客の相談に乗るツーリストポリ
スに行ったらどうでしょうか」と、申しわけなさそうに言った。
しかし、ターミナルからリオ市内まで地下鉄やバスがあるが、まちがいがないよう
にタクシーで行ったほうがいいと言い、ツーリストポリスの住所を書いてくれた。
パパは、ていねいに礼を言い、ターミナルにいたタクシーで、ツーリストポリスが
あるセントロに向った。
途中、タクシーから、外を見たが、山岳地帯のような場所が続いており、住宅地が
ほとんどなく、人も見えなかった。
2,30分で、リオ市内に入った。夕方だったが、人であふれていた。
観光客らしき人々も大勢いて、1ヵ月前に終わったカーニバルの余韻が、まだ残っ
ているようだった。
そして、タクシーは、ツーリストポリスの建物に止まった。建物に入り、用件を言
った。
若い男が出てきて、ここは、盗難にあった場合、盗難証明書を発行するところなの
で、そのような場合は、警察に行ってたほうがいいと言った。
そこで、警察の場所を聞いた。そこから10分ぐらいらしいので、歩いてそちらに
向った。
警察に着き、躊躇していると、玄関にいた警察官が、「どうしたのか」と聞いてき
た。
なんとかポルトガル語で、子供がいなくなったので、相談したいことを伝えた。
その警官は、しばらくパパを見ていたが、「中へ入れ」と言った。
建物の中では、大勢の警官がいて、どこへ行ったらいいのかわからず立ちすくんで
いた。
一人の警官が、パパに気がつき、「何か用か?」と言った。
バスターミナルで、子供がいなくなったことを、もう一度説明した。
しかし、パパが、ポルトガル語が十分話せないことがわかったので、その警官は、
「ちょっと待て」と言って、どこかに行った。
しばらくそこにいると、「こんにちわ」と言って、日本人のような警察官が現れ
た。
「どうしました?」と、やさしそうな笑顔を見せた。
パパは、何回も話したことをもう一度言った。
警察官は、うなずきながら聞いていた。
自分は、カトウという日系3世であることを自己紹介した後、「ぼくも、子供がい
ますので、心より同情します。
しかし、ブラジルは、日本とちがって、凶悪犯罪がとても多く、そちらに時間をか
けざるをえません」
ただたどしい日本語であったが、心から話をしているようだった。
「ターミナルを警戒している警察官もいますから、わたしのほうからも、注意する
ように言っておきましょう。
小林さんも、もう一度探してください。
見つからなかったら、まちがって誰かについていった可能性がありますから、他の
ターミナルにも連絡しておきます」
そのとき、5,6人の警察官が、あわただしく立ちあがり、出ていった。そして、
パトカーの音が鳴りひびき、どこかに走りさった。
パパも、急いで立ちあがり、「それでは、よろしくお願いします」と、頭を下げて
出ていこうとした。
すると、カトウという警察官も立ちあがって、「小林さん、子供さんは、きっと見
つかると思います。今度は、絶対手を離さないでください」と言った。
「ありがとうございます」
「ところで、何かわかったときは、どこに連絡をすればいいんです?」
「いや、リオには、今日来たばかりですから、連絡先がありません。また来ますか
ら」と言って、警察を出た。





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