育児と介護に不安はありませんか?お悩みを解決します。 サイトマップ
インデックスページへ戻る
会社案内
掲示板
メールマガジンへ登録
メールマガジンのバックナンバー
お問い合わせ
メールマガジンバックナンバー

[2006/10/30] 田中君を探して〜パパとぼくの冒険〜第5章14 

ペンションで電話をかけようと思い、ランチョネッチを出た。
しかし、ママと話をする前に、まだやりのこしているような気がした。
ぼくの手がかりを知るためには、日本のようにテレビ局や新聞社に頼むことはでき
ないのだろうかと思った。
日本領事館は、フラメンゴ海岸の近くにあり、コパカバーナ海岸やイパネマ海岸な
どのように、世界中から観光客が来るので、大きなホテルがたくさんあった。
近くのホテルに入って、フロントで電話帳を借りた。
テレビ局は、グローボだけだったが、新聞は、フォーリャ・デ・サウン・パウロ、
ジョルナウ・ブラジリエンセ、エスタダウン、ガゼッタ・メルカチウなどがあっ
た。
そこで、住所を控え、タクシーに乗った。
タクシーの運転手に事情を説明し、テレビ局や新聞社を回ってもらうことにした。
料金は、相場以上に払うので、そこで待ってもらい、もし話を聞いてもらえたら、
時間がかかるだろうから、もう帰ってもいいと言った。
運転手は、パパが陥っている状況を理解し、快く了解してくれた。
テレビ局や新聞社は、セントロに集まっているのでわかりやすかったが、それぞれ
玄関には、ピストルを持った警備員がいた。
特にグローボというテレビ局は、警戒が強かった。
セウ・ペードロという老人が言っていたように、観光客だけでなく、裕福そうにみ
えるテレビ局のスタッフは狙われているかららしい。
だから、どこでも、警備員に用件を伝え、担当の人に会わせてほしいと頼んだが、
伝えておくというだけだった。
急いでいると言っても、「担当者は、まだ帰っていない」というばかりだった。
パパは、すべての会社を回り、待ってもらっていたタクシーに乗った。
運転手は、すべてのテレビ局、新聞社に断られたことがわかったのか気の毒そうに
していた。
20分ほどで、ペンションに着いた。
運転手は、「ぼくの知りあいに新聞記者がいるので聞いておく」と言った。
パパは、礼を言って、ペンションに入った。
オーナーである、モニカさんのおばさんは、笑顔で迎えてくれた。
フロントの片隅に電話があったので、パパは、そっちへ行った。
4,5人の若者がいて、にぎやかにしゃべっていたが、
パパが、電話をかけたがっているのがわかると、オーナーは、出て行く人は早く出
ていき、そこにいる人は静かにするようにしてくれたようだった。
パパは、思いきって、受話器を取った。日本は、朝が早いだろうと思ったが、おも
いきってかけた。
コールは、しばらく鳴っていたが、ママが出た。
「ぼくだ」
「もう田中君に会ったの?」
「いや、今リオデジャネイロだ。実は悠太がいなくなってしまったんだ」
「えっ」
「わけがわからないんだ。
もうすぐサンパウロというとき、トラックやバスのストライキに巻きこまれて、
全然進まなくなったので、ぼくらの乗っているバスは、リオデジャネイロに向かう
ことにしたんだ。
リオデジャネイロからサンパウロまでは、6時間で行けるから、それのほうが早い
ということだった。
それで、リオデジャネイロのバスターミナルに着いて、サンパウロ行きのチケット
を買おうとしたんだ。
しかし、こっちへ来ている人が多くて、混雑していた。
悠太と手をつないで歩いていたんだが、横からも人の流れが来たので、手を離して
しまった。
すぐに悠太がいないことがわかって、すぐに探しまわったが見つからないんだ」
「誰かに連れて行かれたの?」
「そんなことはないと思うけど」
「警察に行ったの?」
「翌日すぐ」
「どうだった?」
「ブラジルの警察は、日本とちがって、こんなことは捜査してくれないんだ」
「なぜ?」
「いや、よくわからなんだが、こっちは、凶悪な犯罪が多くて、手が回らないと言
われた」
「じゃあ、そっちへすぐに行くわ」
「ほんとはママにいてもらいたいんだが、日本でやってほしいことがある」と言っ
て、領事館や、テレビ局、新聞社の対応について話した。
「こちらは、どこも個人のことは考えてくれそうにないので、日本の警察や外務
省、マスコミに頼んでもらえないか」と言った。
「今日行ってくるわ。パパも、なんとかがんばって」
「ブラジルの人は、みんなやさしくて、ぼくらのことを心配してくれる。でもどう
したらいいんだろう?」
パパは、泣きだした。
「大丈夫よ。悠太は、必ず帰ってくるから」
「じゃあ、返事を待っているから」
体の力が一気に抜けたようになり、自分の部屋にもどり、ベッドに倒れこんだ。

「どうだ?アマゾン川は、海のように広いだろう。
満々と湛えた水、広大無念のジャングル。
そこに、どんな危険が待ちかまえていても、みんなで、キッと前を向き、声をかけ
あっていけば、何も恐れることはないぞ。
悠太、ママとのぞみに魚釣りを教えてやれ。びっくりするぐらい大きいなまずが釣
れるぞ。
アマゾン川の夕陽にも感激するぞ」
「あら、悠太がいないわ」
「お兄ちゃん、どこへ行ったの?」
「えっ、いないのか」
「あそこで泳いでいるのは、お兄ちゃんじゃないの?」
「なんだ。楽しそうじゃないか」
「大丈夫?ピラニアに襲われないの?」
「あはは。日本で誤解されているけど、ピラニアは、泳いでいる人間は襲わない
よ」
「お兄ちゃんの近くに誰か来たわ」
「赤い魚だわ」
「あれは、魚じゃない。ピンクイルカだ」
「川にイルカがいるの?」
「そう、カワイルカといって、揚子江やインダス川にもいるんだ。
アマゾンでは、ピンクイルカは、若い男になって、若い娘を連れていくという伝説
があるんだ」
「どうなるの?」
「2,3年立つと、その娘は、赤ん坊を抱いて、一人で村に帰ってくるのだ」
「あのピンクイルカは、悠太に変なこと教えないでしょうね」
「悠太は、まだ子供だよ」
「そうね」
「あはは」
「あはは」
「でも、悠太があんなに小さくなっている」
「悠太、帰ってきなさい」
「悠太、もうもどるんだ」
「お兄〜ちゃん」
どんどんという大きな音がしている。船のエンジンの調子が悪いのか。





ページのTopへ
Copyright (c) 2004 MAM CORPORATION All rights reserved.