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[2007/01/08] 田中君を探して〜パパとぼくの冒険〜第5章24 

窓には、子供たちが鈴なりになって、部屋を覗きこんでいた。
「それじゃ、手下に警官がいるから、そいつに、警察が手入れしたとき死人が出て
いないか聞いてやるよ。
それから組織の抗争ならわかるが、内部抗争ならお手上げだ」
パパは、うなずきながら聞いていたが、頭がくらくらしてきた。
ぼくが厄介なものに巻きこまれてしまって、もう会えないのではないかと思えてき
たのだ。
ボスが立ち上がったので、パパも立ち上がって、握手をした。
喉が、からからに渇いていてうまく言葉が出なかった。
「ゼジニョ。じいさんに何かあったら知らせてくれ」と、ボスは言って、奥の部屋
にもどった。
外に出ると、子供たちは、またゼジニョのまわりに集まってきた。
パパは、「おじさん一人で帰るから、遊んでいったらいいよ」と、ゼジニョに声を
かけたが、「下まで送るよ。ここは危ないから」と、ゼジニョは笑った。
大勢の子供たちに見送られて、ファベーラを離れた。
坂を下りる間、ゼジニョは、「ボスは、言ったことは守る男だよ。必ず悠太を見つ
けてくれるよ」と言った。
また、「おれも、ボスのような男になりたんだ」とつけくわえた。
セントロにつくと、ゼジニョは、これから行くところがあると言ったので、近くの
ランチョネッチで、パンやジュースを買って、ゼジニョに渡した。
そこから、タクシーでペンションに帰ると、オーナーが飛んできて、ママから電話
があったことを伝えた。
すぐにママに電話をした。日本でも、パパが、テレビで訴えたニュースが流れて、
電話が鳴りやまないらしいのだ。
私もすぐに、ブラジルに行きたいが、この状態では無理なので、しばらく日本で連
絡を待っていると言った。 
学校の校長や担任の吉沢先生、歯を治療してもらっている吉岡先生だけでなく、美
奈子とおばさん、同級生の田代や藤沢たちも、心配して家に来てくれているらし
い。
電話となれば、ひっきりなしにかかっている。
パパは、今ファベーラに言ってきたことなどを話し、これからは毎日連絡をするの
でと言って、電話を切った。
そして、急いで警察に向った。
カトウさんに、先日の礼を言い、ある老人が病気なので、病院を紹介してほしいと
頼んだ。
そして、詳しいことを説明した。
カトウさんは、パパがファベーラまで行ったことを聞き、「そこは危険です。関わ
らないほうがいいです」と言った。
「いや、いい人たちです。
とにかく早く病院へ連れていかないと。お金なら、わたしが出しますから」と、
強く言ったので、カトウさんは、「わかりました。すぐに役所に連絡します」
と立ちあがった。

フォフォは、相変わらずぼくたちの運命を決める存在だった。
毎日、いろいろな鳥をくわえて帰ってきた。鳥が抵抗したり、枝が当たったりし
て、
顔から血を出していることもあった。
そういう時は、すぐに血を拭いて手当てをしてやったが、もし大きな動物たちにつ
かまったりしたら、どうなるのだろう。
水は、スコールをためて、何とかなったが、食物は、だんだん少なくなっていたの
で、フォフォの助けを当てにしないわけにはいかなかった。
ぼくらは、フォフォの無事を神に祈るしかなかった。
フォフォは、暗くなってくると、外に出ていかずに、ドナ・マリアさんの横にい
た。
2,3日前からドナ・マリアさんがおかしかった。立ち上がることもできずにずっ
と寝ていた。
フォフォは、ドナ・マリアさんを心配そうに見ていた。時々、辛そうな声を上げる
と、励ますかのように鳴いた。
ウエスレイさんも、「わしは、もうだめじゃから食物はいらん。お前たちで食べて
くれ」と言った。
マルコスさんは、「大丈夫ですよ、ウエスレイさん。みんなで助けあえば出られま
すから、
そんなこと言わないでください」と、ウエスレイさんの手を握って励ました。
ルーカスは、また泣くようになっていたので、ぼくが遊び相手をした。
しかし、ドナ・マリアさんとウエスレイさんが弱ってきてから、そんなに泣くこと
もなく、いつもぼくの横にいた。
ぼくも、泣きたくなったら、ルーカスさんとジューニオルさんの手伝いをすること
にしていた。
フォフォがつかまえてきた鳥を料理したり、
フォフォが出ていく小さな窓をぼくらが出ていけるようにすることが、
マルコスさんとジューニオルさんがしていることだった。
二人が疲れたら、ぼくも、鳥の羽をむしったり、落ちていた蝶番(ちょうつがい)
を石で叩き岩を削ったりした。
マルコスさんとジューニオルさんは、休みなく岩を削っていたが、ドナ・マリアさ
んとウエスレイさんが弱ってきてからは、夜は止めた。
カン、カンという音で、二人をさらに不安にさせないためだろう。
そして、二人に気をつけるだけでなく、ぼくとルーカスにも、歌を歌ったり、昔話
をしてくれた。
ときおり、風に乗って、ゴーゴーというリオの街の音が聞こえてきた。
人の話し声や車が走っている音が混じっているのだ。パパが大声でぼくの名を呼ん
でいるように思えた。





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