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[2007/01/22] 田中君を探して〜パパとぼくの冒険〜第5章26 

パパは、夢に出てきた子供たちは誰だったのだろうかと考えた。
ワァーワァーという声や竹ざおが当たる音、ビューという石が飛んでくる音を聞き
ながら、岩陰で震えている一年坊主の中に自分がいたようだったが、
正八じいさんを助けるために、自分が着ているシャツで竹ざおをくくったり、
大人を呼びにいくように指示したのは、ゼニジョだったような気がした。
正八じいさんを抱え、川原まで運んだ上級生の中には、田中君や悠太がいたようだ
った。
しかし、なぜ夢の中で、みんな友だちになっているのだろうか。
確かに、あのような遊びをしたおぼえがあるけど、誰かに石があたって大けがをし
たので、すぐ禁止された。
正八じいさんも、よくからかったけど、川におぼれたことはなかったはずだ。
夢の中で、大人たちは子供たちをほめて、子供たちも得意顔で笑っていた。みんな
楽しそうだった。
悠太の行方が知れないまま時間は進もうとしない、いや、空回りしかしないので、
あんな夢を見たのだろうか。
情報を待っているだけでは悠太を助けられないということだ。それでは、何をすべ
きか。
自分のことを一生懸命考えてくれている子供たちに、何かすることはないのか。
ゼジニョたちは、若い親が結婚せずに生まれたので家庭を知らない。
だから、あのフェベーラにも住めないので、通りや排水溝で寝ている。
街で新聞やチョコレートを売ることはあるが、中には麻薬を売ったり、かっぱらい
をするので嫌われている。
カトウさんの話では、ブラジルの警官は、仕事にあぶれた人間が集められているの
で、日本のようにきめこまかい仕事をしない。
しかも、店の主人が、警官に金を渡して、その店の前にたむろする子供たちを追っ
払うというのだ。
家庭もなく、社会からも除け者にされた子供たちはどう生きていけばいいのだろう
か。
今、自分は、自分の子供を探しているが、あの子供たちは、どう思っているのだろ
うか。
それなのに、悠太を一生懸命探してくれている。セウ・ペードロ老人の世話も一生
懸命している。
子供たちを救う施設もあるが、そこに入っても、すぐに出ていくらしい。大人に対
して不信感を持っているし、そういう生活に慣れていないのだ。
もちろん、ファベーラから世界的に有名なサッカー選手が出ているのは知られてい
るが、そんなことはほんの一握りの子供たちなのだ。
ほとんどの子供たちは、何の希望もなく生きていかなければならない。しかし、子
供たちの瞳は輝いている。きっと自分の進む道を見たがっているのだ。
施設がいやというのなら、こちらから出かけていったらいいのだ。
日本で仕事が順調なときは、こんな現実を聞いても興味がなかっただろう。
ブラジルに来たときでも、悠太の事件がなかったら何も考えなかっただろう。
サンパウロでもリオデジャネイロでも、そんな子供たちを風景としか映らなかった
だろう。
でも知ったかぎりは、自分でできることをしようと考えた。悠太にたどりつく道も
そこにあるはずだ。
しかし、これは、廃院での肝試しのように、よかれと思ってしたことが、また騒ぎ
になってしまわないだろうかとも不安になった。
もう募集をはじめたのだから、その結果から考えてみようと決めた。そして、また
警察に行った。
カトウさんに、セウ・ペードロ老人が無事に入院できた礼を述べ、さらにターミナ
ルで、事件を目撃した人に会いたいと頼んだ。
次の日、カトウさんから連絡があり、午後に警察に来てくれるとのことだった。
警察で待っていると、がっちりした体の男があらわれた。ナカムラという名前だっ
た。
しかし、何か悪いことをしたかのようにおどおどしていたので、パパは、大きな声
で、警察に連絡してくれたこと、また来ていただいたことの礼を言った。
「悠太君ではないかもしれないので、人違いだったら謝ります。ごめんなさい」
と、ナカムラさんは、ときおり日本語を交えながら言った。
「何の手がかりもないのです。もしちがっていたら、他を当たればいいのですか
ら」
「はい」
「そのときは、どんな様子でしたか?」
「何気なく見ていましたが、兄弟のようでした。兄さんのほうが、大きなリュック
を背負った子供に、にこにこ笑って近づいてきました」
「子供は、どんな様子でしたか?」
「後で思いだしたのですが、重そうなリュックでしたから、お兄さんのほうが、
すぐにそれを持ってやるのかと思っていましたが、そのままで、何かを見せていま
した」
「どんなものでしたか?」
「何か手紙かノートのようなものだったと思います」
「その後はどうなりましたか」
「何回も言いましたが、そのとき、バスが出発しました。
ほんとは、そのあとのバスの予定だったのですが、仕事が早く終わり、そのバスに
乗ることができたのです。すみません」
「いえいえ、そんなこと」
パパは、その子供は、悠太にちがいないと思った。誰かに連れさられたのだ。もう
一度ボスに会わなければならないだろう。

翌朝ペンションのドアがノックされた。
あわててドアを開けると、オーナーだった。「応募の電話よ」と笑顔だった。
パパが、オーナーに計画を伝えると、「そりゃ、すばらしいわね。でも、悠太を探
さなくてもいいの?」と心配した。
「子供たちにお礼をしたいのです」と、パパは言った。
電話に出ると、若い男だった。「学生ですが、ぼくにもできますか」とたずねた。
「きみに、子供たちを遊ばせる気持ちがあるなら大丈夫です」と答えた。
その後も、応募の電話が続いた。
「どこでするのか?」、「ギャラはもらえるのか?」、「そのような子供たちに教
えられるのか」という質問に、しどろもどろになりながらも、ていねいに答えた。
とにかく何かが動きだしたのだ。
そして、さらに動きがあった。ママとのぞみが来るのだ。





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