[2007/01/29] 田中君を探して〜パパとぼくの冒険〜第5章27
海岸での授業に参加したいという人からの電話だけでなく、ママから電話がかかっ
てきたのだ。
みんなが留守を引きうけてくれて、電話番も、交代でしてくれるというのだ。
そこで、明日のぞみと二人リオデジャネイロに向かう予定だという。
パパは、一番自分を支えてくれる者が来てくれることを聞いて安心した。
暑さと疲れで、体だけでなく、気持ちも弱っているのがわかっていたからだ。
これで、悠太を見つけだすための最善の方法を見つけることができるはずだ。
翌日の昼に、ゼジニョがいる海岸近くのランチョネッチに集まってもらった。
20代の男女5、6人と、4,50代の人や、70才ぐらいの人もいた。
20代の中には、日本の女子学生もいた。
マユミという、小柄だが明るい女子学生は、パパのことを知っているようだった
が、それについてしゃべらなかった。
パパは、まず自分のおかれている状況について話を切り出してから、なぜここに集
まってもらったかを話した。
みんなテレビや新聞で事件のことは知っていたので、それを聞いてびっくりしたよ
うだった。
しかし、みんな、女子大生と同じようにお気の毒にという表情はしたが、
なぜこんなときにこんなことをするのか怪訝に思っているようだったので、
「今やれることをやるだけです。子供も、今じっと耐えているでしょうから」と言
った。
「それでは、今から海岸に行ってみましょう」と立ちあがった。
浜辺を排水溝のほうに向って歩いていった。
警官か役人ではないかと遠くでうかがっていた子供が、パパとわかったらしくおそ
るおそる近づいてきた。
パパは、ゼジニョを探していることを言うと、岩まで走り、そこから林の中を排水
溝へ向っていった。
しばらくすると、ゼジニョが、4,5人の子どもたちといっしょに走ってきた。
しかし、10人近くの人間がいっしょだったので、少し離れて様子を見た。
パパは、セウ・ペードロ人じいさんが入院している病院へいっしょに行くことを約
束してから、パパが計画していることを説明した。
そして、ここにいるのは、君たちに教えてくれる人たちだと紹介した。
ゼジニョたちは握手はしたものの、「おれたち何も知らないよ」とゼジニョが言う
と、他の子供たちも、「そうだよ。そんなもん必要じゃないよ」と不満そうだっ
た。
パパは、「知らないからおぼえるんだよ。
おぼえてから必要かどうか考えたらいいんだ」と答え、「早速明日から勉強を始め
るので、ここに朝8時に集まるように」ときっぱりと言った。
子供たちは、まだ口々に何か言いながら去っていった。
パパは、応募してきた人に、「子供たちに、夢を与えたいと思う人は、明日来てく
ださい」と言って別れた。
翌朝、5人が浜辺にやってきた。
政治を勉強しているアントニオという学生、サッカーの選手を目指しているがけが
をして苦しんでいるマンニシャ、
数ヶ月前に仕事をやめたクラウディオ、ポルトガル語を勉強しているマユミ、
そして、チオ・サンドロという老人だった。
「こんなとしよりだがいいかな?」と聞いてきた。
「ありがとうございます。私を助けてください」と答えた。
「あんたが気に入ったので、何か役に立てばと思って来たのじゃ」と言った。
子供たちといえば、ゼジニョを含め6人だけだった。
パパは、「よく来てくれた」と笑顔で迎えた。
暑いので、岩陰にすわって、授業をすることにした。
最初の日は、教師の一人一人が話をすることにした。
アントニオは、どんなことが好きかを聞き、マンニシャは、サッカーの話をした。
クラウディオは、パソコンの話をし、マユミは、日本の折り紙を教えた。
チオ・サンドロさんは、「何か困ったら、おじさんもいっしょに考えるよ」と声を
かけた。
この日は、11時頃に授業は終わった。
ゼジニョたちは、緊張していたが、だんだん目が輝き、夢中で話を聞くようになっ
ていた。
パパは、「次回のことは、子供たちと話をしてから連絡します」と言った。
翌日午後6時、パパは、以前ガレオンといっていたアントニオ・カルロス・ジョビ
ン国際空港に、ママとのぞみを迎えにいった。
1時間ほど遅れて、二人は出てきた。のぞみは、パパを見つけると走ってきた。
しかし、二人とも笑顔はなかった。
パパは、ママとのぞみに、「ごめん。こんなことになってしまって」と謝った。
「いいのよ。パパのことが心配だったわ」とママは答えた。
「2人が来てくれてうれしいよ」
「3人で悠太を探しましょう」
「とにかくペンションに行こう」と、タクシー乗り場に向った。
タクシーは、空港があるゴベルナドール島から、海にかかる道を通って、セントロ
をめざした。
「情報はあるの?」
「いや、あまりないんだ。あそこを見てごらん」と、山側をゆびさした。
そこには、家が密集していた。
「あれは何?」
「ファベーラといって、貧しい人たちが住んでいるところだ」
「ものすごい数ね」
「あそこは危険で、観光客だけでなく地元の人も近づいてはいけないといわれてい
る。
あそこに住んでいる子供は、ほとんど学校にも行っていない。しかも、麻薬や拳銃
の運び屋までしているんだ。
街で知りあった老人と子供たちが、ぼくのことを心配してくれて、
いっしょに悠太を探してくれているんだけど、親がいないので、ファベーラにも住
めなくて、野宿している。
そこで、何か子供たちにできないか考えて、今勉強を教えようとしているんだ」
タクシーは、ペンションに着いた。
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