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[2007/03/05] 田中君を探して〜パパとぼくの冒険〜第5章32 

ママは、頭まですっぽり毛布をかぶっているパパを見て、何かおかしいと胸騒ぎが
した。
すぐさま頭を起こし、「パパ、パパ」と声をかけたが、うーんといううめき声が聞
こえてきたので、あわてて毛布をめくった。
すると、パパは、寝汗をかき、ぐったりしていた。
「大丈夫?」と言って、額に手を当てると、驚くほど熱があった。ママは、すぐに
着替えをし、部屋を出た。
フロントは誰もいなかった。
時計を見ると、まだ5時になったばかりだった。少し迷ったが、フロントの奥にあ
るオーナーの部屋をノックした。
オーナーは、すぐに出てきた。ママは、朝早く起こしたことを詫びた後、事情を話
した。
オーナーは、氷を用意してくれたので、すぐに部屋にもどり、氷をタオルにくる
み、額を冷やした。
のぞみも起きてきて、パパの様子を心配そうに見ていた。
「パパは、どうしたの?」
「熱があるの。きのうスコールにぬれたからかしら」
そのとき、ノックの音が聞こて、すぐにドアが開いた。オーナーだった。
「熱はどう?」と聞くやいなや、パパの額をさわった。
「これはいけないわ。すぐに病院へ行きましょう」
そう言うと、また出ていった。10分ほどすると、バタンとドアが開いて、オーナ
ーと、救急隊員らしい二人の男が入ってきた。
オーナーは、「救急車が来たわよ。早く行きましょう」
救急隊員は、パパの容態を調べて、部屋の外に置いてあったストレッチャーに、パ
パを乗せた。
パパは、あいかわらずぐったりしたままだった。
救急車には、ママがつきそい、のぞみは残り、オーナーが見てくれることになっ
た。
救急車は、リオの街中を走り、病院に着いた。そこは、セウ・ペードロじいさんが
入院している私立病院だった。
ママは、緊急治療室の待合室でずっと待機していた。午後3時頃になって、ようや
く医者が来て、ママと握手をした。
「きっと疲れが出てきたのだと思います。もう大丈夫ですが、しばらく入院したほ
うがいいでしょう」
パパは、一般病棟へ移った。点滴を受けていたが、表情は落ちついていた。
担当の看護師が、「もう大丈夫よ。今日はお帰りなさい。わたしたちが見ているか
ら」と言ってくれたので、病院を出た。
ペンションに帰ると、オーナーとのぞみが出迎えてくれた。
オーナーは、パパの様子を聞き、「よかったわ」と笑顔でうなずいた。
「のぞみ、お腹がすいたでしょう?」
「おばさんが作ってくれたの」
「ありがとうございます」
「いいのよ。あなたの分もあるから食べて早くお休みなさい。あなたたちも倒れた
ら、パパも困るし、悠太も悲しむからね」
翌朝早く、ノックの音が聞こえた。ママは、もう身支度をすませていたので、ドア
をすぐ開けると、オーナーが、困ったような顔をして立っていた。
「何かありましたか?」
「警察のカトウさんからの電話なのよ。きのうのことを話して、私が聞いておくか
らと言ったのに、『奥さんと話をしたい』と譲らないの」
「わかりました」
ママは、悠太のことで何かわかったことがあるのか思い、急いでフロントへ言っ
た。
「朝早くごめんなさい。今お聞きしましたけど、小林さんは、どうですか」
パパの様子を聞いた後、カトウさんは言った。
「麻薬の密売場所をめぐって、またあちこちのファベーラ同士で抗争が起きて
います。
警察も密売組織の捜査するので、しばらくはどこのファベーラにも行かないように
してください。
悠太君のことも、同時に調べることになっていますから」
ママは、電話を切った後、気を取りなおして、心配そうにしているオーナーに、
電話の内容を伝え、警察も捜査してくれるようですから、安心して待っていますと
言った。
その後、二人は病院へ行った。
パパは、かなり回復しているようで、二人を見ると笑顔を見せた。それを見ると、
今は、カトウさんから電話があったことは言わないほうがいいような気がした。
「ぼくは大丈夫だから、じいさんを見てきてくれないか」
「そうするわね。後で来るから」
セウ・ペードロじいさんは、最初ママのことは思いだせなかったが、
ようやくわかってくれて、「小林さんにはお世話になった。子供たちも、ときどき
来てくれる。ありがたいことじゃ。
奥さんも、たいへんじゃろうが、退院したら、命をかけて、悠太を探すつもりじ
ゃ」と、ママを励ました。
ママとのぞみは、パパが気にしている海岸に行くことにした。
今日も、マユミがいて、まわりに子供たちが集まっていた。他にも大人がいるよう
だった。
マユミが折り紙を教えている間、近くで待っていた。
そして、マユミが二人に挨拶をして、チオ・サンドロさんを紹介した。
チオ・サンドロさんは、「こんにちは。小林さんはどうされました?」と、にこや
かに聞いた。
ママは、マユミの助けを借りて、パパのことを話した。「そりゃ、いけない。遠慮
なく私たちを使ってくださいよ」と顔を曇らせて言った。
マユミさんも、どういうべきか迷っているようだったので、「疲れがたまっていた
ようで、しばらく休めば元気になると言われているよ」
マユミの顔は、安心したように笑顔が広がった。
パパが、電話で言っていたように、ここには、ほんとにいい人ばかりいると思うと
涙がこぼれそうになった。
そして、なにげなく子供たちを見ていると、以前より女の子も増えているようだっ
た。
マユミががんばっているからだろう。
のぞみの横にも、5歳ぐらいの女の子がいた。
顔は汚れ、髪の毛は手入れされていなかったが、つやつやした黒い瞳で、のぞみを
見ていた。





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