育児と介護に不安はありませんか?お悩みを解決します。 サイトマップ
インデックスページへ戻る
会社案内
掲示板
メールマガジンへ登録
メールマガジンのバックナンバー
お問い合わせ
メールマガジンバックナンバー

[2007/04/09] 田中君を探して〜パパとぼくの冒険〜第5章37 

「ああ、どうしたらいいのだろう?」パパは、手すりを強く握りながら、苦しそう
につぶやいた。
平井先生は、それを聞いて、パパに声をかけた。
「小林さん、大丈夫ですよ。ファベーラには近づくなと言われていたのですが、
さっき会った老人は、ほんとに心配してくれていました。
どこに住んでいても、気持ちは伝わるものだと思いました。
悠太君が、この近くにいるのはまちがいないと思います。
しかも、悠太君は、一人でいるのはなく、何人かでいるようです。
大人もいれば、何とか生きのびる方法を見つけているはずです」
「ぼくらも、できるだけのことはしますから」田宮さんもパパを励ました。
「ありがとうございます。
ぼくがもっと気をつけていれば、皆さんに迷惑をかけることもなかったのに思う
と、心が痛みます」と、パパは唇をかんだ。
「悠太君が待っているのですから、いっしょにがんばりましょう」と、声をかけた
のは、美奈子のお母さんだった。
そのとき、アメリカ人らしい団体客がやってきて、驚嘆の声を上げた。
田宮さんは、その大声に負けないように、「どうしましょうか?」と平井先生にた
ずねた。
「こんなに観光客が多いのですから、展望台から見えるところにはアジトはないで
しょう。
人が出入りしてもわからないように、林の中に作っているのにちがいありません」
と、平井先生は、あちこちの山を指さしながら答えた。
「あのおじいさんの話では、キリストの足元が見えるところにあるのではないかと
言っていました」
「そうでしたね。でも、キリストが立っているこの山は、電車や車が行き来してい
るので、多分ないでしょう」
「それなら、足元が見える近くの山から探しましょうか」
「それがいいと思います」
平井先生と田宮さんは、大きな声で、どうするかを話しあった。
四方を山に囲まれた展望台に立っていると、どんなことがあっても助けたいという
気持ちと、もう手遅れなのではないかという思いが、
パパとママの心を苦しめていると思ったからだ。
「今日から、ぼくらも、小林さんのペンションに移ります」平井先生は、パパに言
った。
すでに打ちあわせをしていたようで、みんなうなずいた。
それから、タクシーで、ペンションに向った。
オーナーに、そのことを言うと、笑顔で了承した。
そして、「わたしにできることはなんでもしますから」とつけくわえた。
1時間ほどして、平井先生、美奈子、美奈子のお母さん、田宮さん、マリアナは、
荷物を持って、ペンションに帰ってきた。
部屋は、オーナーが、男、女、そして子供たちに分けた。のぞみといつもいっしょ
にいるマルネーネもいた。
こうして、コルコバードの丘を探す態勢ができた。
次の日、新聞に、こんな記事が乗った。
半鐘の形をしたボン・ジ・アスーカルという巨大な岩を背景に、
ゼジニョら家のない子供たちが、海岸で、マユミから折り紙を教わり、マニンシャ
とサッカーをしている大きな写真があった。
みんな楽しそうだった。歯の抜けた口を大きく開けて笑っている子供もいた。
記事は、「息子が行方不明になっている小林さんが、心配しているストリートチル
ドレンのために、自らの金で学校を作った」と書いてあった。
最後には、ブラジル人の言葉として、「わたしたちは、この子供たちを邪慳にして
はいけない。
ブラジルの未来は、子供たちにかかっているのだから。『バス714事件』を忘れ
るべきではない」
「子供たちには施設が用意してあるはず。それなのに、規律が守れなくて、施設を
飛びだしたんだ。
そしてストリートで、かっぱらいや麻薬を売っているのだ。そんな連中を助ける必
要はない。
大体、外国人ということで、特別に警察が捜査をしているというじゃないか。それ
なのに、
まかせっきりで、こんなことをしても意味がない。ブラジルのことは、ブラジル人
でする」
パパは、田宮さんに助けてもらいながら、記事を読んだ。
「別に気にしていませんよ。ゼジニョたちが喜んでくれているのですから、それで
満足です」
「そうですね。悠太君が帰ってくれば、みんな友だちになりますよ」と、田宮さん
も同意した。
そして、いつものランチョネッチで、サンドイッチを食べた後、2台のタクシー
で、コルコバードの丘に向った。
田宮さんは、展望台に向う道に行かずに、もう一本先の道を行くように、運転手に
言った。
そして、林が始まる場所に来たときに、ここで止まるように言った。
運転手は、「どうしたんだ?こんなところには何もないよ」という顔だった。
タクシーから降りて、あたりを見回すと、リオの街はすぐそこに見えていたが、キ
リストは、上半身が見えているだけだった。
平井先生は、地図を取りだし、田宮さんとパパの3人で、今どこにいるかを確認し
た。
「じゃあ、今から悠太君を探しましょう。奥さんや子供たちは、下のほうを探して
もらえますか。ぼくたちは、上を探します。
何か小屋のようなものを見つけたら、すぐ連絡してください」と平井先生は、みん
なに言った。
パパは、美奈子のお母さんに、「奥さん、けがをしないように気をつけてくださ
い」と頭を下げた。
そして、「ママ、子供たちをよく見ておいてくれ」と言って、林の中に入った。
道らしきものはあったが、木の枝が伸びていて、なかなか進めなかった。
「後で、木の枝を切るものを買ってきましょう」田宮さんは、枝の下ををくぐりな
がら言った。
林の中は、むっとする暑さだった。
街の音が聞こえていたが、静かだった。
がさがさいう音に驚いたのか、ときおり、鳥が、キッと鳴き声を出して、バタバタ
飛びたった。





ページのTopへ
Copyright (c) 2004 MAM CORPORATION All rights reserved.