[2007/04/23] 田中君を探して〜パパとぼくの冒険〜第5章39
パパは、みんなに言った。
「日本にいるときは、誰も信じられないようになっていましたが、
ブラジルで、こんなことになって、皆さんが、私たちのことを心配してくださって
いることがよくわかりました。
今日は、悠太の友だちも心配して駆けつけてくれました。
悠太は、この近くでまっているのはまちがいありません。早く助けだしてやりたい
と思います。
でも、けがをしないように気をつけてください。
特に、スコールになれば、足が滑って危険ですので、スコールが来そうになれば、
すぐに帰りましょう」
みんなの顔には、「今日こそは」という思いがあらわれていた。
その後、平井先生は、みんなに探す場所を決めた。
すぐに、ゼジニョたちは、林の中に飛びこんでいった。
しかし、丘とはいえ急峻な山であり、また蒸し暑いのでなかなか進むことはできな
かった。
あちこちで、「悠太」、「悠太君」という声が響いた。
そして、昼になり、ランチを取ることになった。みんな汗びっしょりで帰ってき
た。
30分ほど休み、また林の中にもどっていった。
1時間ほどして、ゼジニョの声が響いた。「おじさーん、どこにいるの?」
パパは、その声を聞き、すぐ「ゼジニョか?」、「どうしたんだ?」と叫び、ゼジ
ニョのほうへ走っていった。
しかし、枝や草に阻まれ、頭を打ったり、転んだりしながらも、転がるように走っ
た。
汗が目に入って、前が見えないほどだった。
「こっちだよ」というゼジニョの声を頼りに走り、ようやくゼジニョが見えた。
「ゼジニョ、どうした?」パパは息を切らしながら聞いた。
「向こうに小屋があったんだ」
「えっ」
そのとき、田宮さんと平井先生も急いでやってきた。
すぐに、その小屋のほうへ向った。
パパは、胸が苦しくなってきたが、みんなに遅れないようについていった。
リカルドたちがいて、「こっちだ!」と叫び、走りだした。
リカルドたちについていくと、木の間に、何か建物が見えてきた。
しかし、高さは1メートル半、一辺は2メートルぐらいの小さなものだった。
屋根もなく、ただブロックで固められただけで、まるで箱のようだった。
かなり前に作られたようで、かなり汚れていた。
「ドアがあるけど、開かないんだ」リカルドは、ドアを指さした。
反対側に金属のドアらしきものがあり、鍵穴があった。
パパは、「悠太」と叫び、ドアを叩いた。
田宮さんも、「悠太君」とドアを叩き、開けようと試みたが、むなしい音がするだ
けだった。
「よし、全員でぶつかって開けよう」
平井先生は、そう言ったが、ドアの幅は50センチぐらいしかなかったので、同時に
ぶつかることはできなかった。
それで、交代でドアに体当たりすることにした。
大人が疲れると、ゼジニョたちもすると言いだした。
何回も交代でぶつかっていると、ドアに隙間ができてきた。
田宮さんは、隙間に木の枝を差しこんで、こじあけようとした。
ようやくドアに、手を入れるぐらいの隙間ができた。田宮さんが、ドアを引きはな
し、小屋の中に飛びこ込んだ。
パパも、急いで入った。中は、真っ暗だった。目が慣れてきて、あたりを見回した
が、誰もいなかった。
さらに見ると、紙くずや空き缶が散らばっていた。
「悠太はここにいたのでしょうか?」パパは、誰にともなく聞いた。
「ちがうと思います。どれも、最近のものではないですから」田宮さんは、散乱し
たごみを調べながら答えた。
悠太の手がかりはなさそうだったので、そこを離れることにした。
山道を下っていくと、ママたちが待っていた。
「何かわかったの?」
「ゼジニョたちが小屋を見つけてくれたのだけど、ずいぶんと前のものらしい」
もうスコールが来る時間になってきたので、引きあげることにした。
みんな疲れていた。誰も黙っていた。パパは、ゼジニョたちに食事をさせることに
した。
なじみのランチョネッチだったが、他の客が嫌がるかもしれないので、そこで、サ
ンドイッチやジュースを山盛り買って、ゼジニョたちに渡した。
「今日はありがとう。ゆっくり休んでくれよ」
みんなで、ゼジニョたちを見送った後、ペンションに帰った。
翌日、コルコバードの丘に行くと、ゼジニョたちが待っていた。
「今日も探してくれるのか?」パパはと手を上げた。すると、向こうから、杖をつ
いて歩いてくる者がいた。
「セウ・ペードロさん!」パパは駆けより、「お体のほうは大丈夫ですか?」と声
をかけた。
「大丈夫じゃ。子供たちに、悠太を探しているということを聞いて、いてもたって
もおれなくなって、ここに来た」
「無理をなさらないでくださいよ」
「あんたこそ。わしは、こんな体じゃから、山の中には入れんが、ここらのことは
よく知っておる」
「ありがとうございます」
きのう、ゼジニョたちが、老人のいる施設に行って話したらしい。
午前中は、何も見つけることはできなかった。
午後、林の中にいると、空気を揺るがすほど大きな音がしはじめた。木の間から覗
くと、ヘリコプターが、操縦士が見えるほど低く飛んでいた。
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