[2007/04/30] 田中君を探して〜パパとぼくの冒険〜第5章40
「どうしたんだろう?何かあったのか」パパは見上げた。「こっちを見ているよう
だ」
しかし、爆音がすさまじいだけでなく、巻きおこる風によって、木々が大きく揺れ
た。
どこかにつかまっていなければ吹きとばされるようだった。
ヘリコプターは、1時間近く上空を旋回したり、ホバリングをしたりしていた。
しかし、その間も探しつづけた。11時になったので、ランチを取る場所に戻っ
た。
みんなも帰ってきた。セウ・ペードロじいさんも、汗まみれで帰ってきた。
「セウ・ペードロさん、無理なさらんでくださいよ」パパは、声をかけた。
「大丈夫だ。どこかで悠太の声が聞こえるようで、子供たちについていっただけだ
から」と言いながら、その場にすわりこんだ。
田宮さんは、「さっきのヘリコプターは、どっかの新聞社のようでしたね」と言っ
た。
「誰かが知らせたのでしょうか」と、平井先生も言った。
ランチを食べていると、二人の男がやってきた。パパは、立ちあがった。
自分たちはオ・グローボという新聞の記者だと名乗った。
「何をしているのですか」
パパが、説明をすると、パパのことはよく知っていた2人は、「そうでしたか。心
から同情します。
うちのヘリコプターが、リオの風景を撮っていたんですが、林の中に、大勢の人影
が見えたので、『調べるように』と会社に連絡をしてきたので」と恐縮した。
しかし、2人は、田宮さんや平井先生、ママたちにも話を聞いて帰っていった。
午後からも、それぞれの場所を探したが、何も見つけることができなかった。
疲れがたまってきたか、こけたり、ぶつかったりして、けががする者が増えてき
た。
夕方、ペンションを訪ねてきた人があった。リオ警察のカトウさんだった。
パパを見るなり、「小林さん、あちこちのファベーラを当たっているのですが、
どうもうまくいかなくて申しわけありません」と頭を下げた。
「カトウさん、ありがとうございます。ファベーラで抗争が続いていることは知っ
ていますので」
「ファベーラ以外でも捜査していますから。ところで、小林さんたちは、ファベー
ラの丘に行かれているのですか?」
パパは、抗争事件が起きたので、悠太たちは、アジトに取りのこされたままになっ
ているのにちがいない。
そのアジトは、コルコバードの丘のどこかにあるようだという、ファベーラの老人
から聞いた話をした。
「コルコバードの丘のまわりの山に登っている人がいるという情報があったので、
もしかしたら、小林さんたちでないかと思いました。
そういえば、あの付近で、麻薬を隠していたマフィアがいましたね」
「日本やマナウスからも、友だちが来てくれています」
「警察もできるだけ早く協力します」
翌日の新聞に、パパたちがコルコバードの丘を探している記事が載った。白いキリ
スト像を中心に、上空から撮った写真も掲載されていた。
パパたちは、この写真の中に、ぼくが閉じこめられているアジトがあるにちがいな
いと、写真を食い入るように見た。
しばらくすると、ペンションに電話が鳴りひびいた。
オーナーが出ると、新聞を見たが、自分も、捜索に参加したいという内容だった。
そういう電話は、ペンションを出るまでに、4,5本あった。
そのヘリコプターの爆音は、ぼくらも聞いていた。
今までも、ヘリコプターの音を聞くことはあったが、こんなに近くで聞いたことは
なかった。岩のアジトが揺れるようだった。
また、最近、何を言っているかわからないが、どこからともなく叫び声のようなも
のも聞こえてくることもあった。
しかし、助けを求めようにも、体が弱っていて、大声を出すことができなかった。
壁にもたれていたマルコスさんは、すぐに立ち上がり、壁に立てかけてある棚を伝
って、窓から外を見た。
そのとき、フォフォがあわてて帰ってきた。あまりにびっくりしたのか、何もつか
まえていなかった。
フォフォも体力がなくなってきているのか、以前のように、
一番上から飛びおりることはできなくなっていて、棚の半ばまで、そろそろと下り
てきて、そこから飛びおりた。
「ぼくらを探しにきているのだろうか」と、マルコスさんは、ヘリコプターを探し
たが、窓からは見えなかった。
ジューニオルさんとぼくも、立ちあがって、マルコスさんの下に行ったが、爆音
は、少し離れるかと思えば、また帰ってくるのが聞こえるばかりだった。
ルーカスも、ぼくの横にやってきて、ぼくの手を強く握っていた。
ドナ・マリアさんとウエスレイさんは、目を開けたようだったが、寝たままだっ
た。
「誰かがメモを拾ってくれていたらなあ」と、ジューニオルさんが大きな声で叫ん
だ。
ぼくらは、ノートや残っていた新聞紙に、救助を求める文章を書いて飛ばしていた
のだ。
マルコスさんは、どんな文章でもかまわない、でも、ここの目印になる言葉は書く
ように言った。
それを、なるべく風が強そうなときに、窓から飛ばしたのだ。
でも、窓からは、林が見えるだけだったので、風があっても、木に引っかかって飛
んでいくとは思えなかった。
しかし、ぼくらは、奇跡を信じて、毎日飛ばした。
それにしても、もうどれぐらいここにいるのだろうか。いつもお腹がすいていたの
で、頭がボッとして、考えることができなくなっていた。
水は、スコールを貯めるので困らなかった。その雨水で体を拭いたり、洗濯もし
た。またトイレで使うこともできた。
ぼくが持っていた服は、ルーカスに着せた。タオルなども、みんなで使うことがで
きた。
しかし、食べものは、日に日に少なくなっていた。肉と豆の缶詰が二つあるだけだ
った。
もしフォフォがいなければ、ぼくらは全員死んでいただろう。
新聞にコルコバードの丘を探す記事が載った日、10人近いリオ市民が来てくれ
た。
しかし、大勢の人が探したが、何も見つけることができなかった。
夕方、ゼジニョが、息を切らしながらペンションにやってきた。
「どうしたんだ?」
「仲間が、こんなものを拾っていたんだ。すぐにおじさんに渡そうと思って」と、
紙切れを見せた。
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